シネマホール町田 洋画館

映画館がありそうでない町田で映画を観る

ブラックレイン(Black Rain)1989年

2017年の今観ると、80年代の独特な存在感が改めて感じられる。ファッションは武装のように未来的にトンガっていても、雑然とした昭和のの街並みは依然として残っている。
主人公たちの異国故の狭い人間関係の対比として、人の群れがまるで異形のモノとして描かれている。あの時代の恐ろしさも連想する。
 
Blu-rayで観ると28年前の作品とは思えないほど画面が綺麗、特に黒が。夜の、影の、車体の反射の。異物感。
 
松田優作の演技を観るのは実は初めて。この作品では、ウロコさえない蛇のようなヌメッとした狂気を演じている。
後半、ヤクザの「盃」の意味が語られる。繋がりからは自分勝手に離れることはできないという象徴。大空襲が終わり、黒い雨が降った後、その繋がりを離れる人間が涌いた。世間からは犯罪を犯して離れ、ヤクザからは不義理を犯して離れる。それが松田優作の演じる佐藤。
戦後日本の根無し草で言葉だけの「自立と個性」を体現したような狂気。
だけど21世紀の今、佐藤は街のあちこちを歩いているんじゃないか?
 
マイケル・ダグラス高倉健との、屋台でうどんを食べる際の会話が、中盤からラストにかけての軸になる。
サスペンスとしてもアクションとしても成立するこの作品が、そのジャンル分けを超えて記憶に残り続ける名作足り得ているのは、この軸があるからこそだろう。
 
後半、ヤクザの親分・菅井が英語を喋るシーンがある。それまでに異文化のすれ違いと交流が描かれていたからこそ、言葉の違いを超えてもなお理解し合えない生き方の違いのようなものが感じられる。
 
群衆シーンの撮影はどう撮ったんだろう?ハリウッドでは通行人の1人まで役者だと聞いたことがあるけれど、交差点のシーンは記録映像のようにリアル。
 
高倉健さんが上司に叱られるふ役柄なのは今となってはなんだか不思議。
世代によっては昭和の景色の感じ方も変わるだろうし、観る時代によっては何も変わらないものにも気付くかもしれない。
 
 
アメリカ/1989年9月22日 公開/125分
監督 リドリー・スコット
出演者 マイケル・ダグラス高倉健松田優作アンディ・ガルシア